だいじょうぶ、仲間だから
子どもが保育園のときの話です。
知的障害のある息子はなかなか就園は難しく、最後の年長のときに受け入れてくれる保育園をやっとみつけて1年間通いました。
年長の5.6歳の子どもたちはかなりしっかりしていて、まだ言葉も単語程度しか話すことのできない息子とは全然違っています。
最初はいきなりそんな新入りがやってきて戸惑っている様子も見受けられる子どもたちでしたが、1ヶ月もしないうちにあっという間に受け入れお世話係をしてくれる子などもいて、息子はみんなと同じことはできないながらもそれなりに園生活を楽しんでいました。
大分、園に慣れた秋に行われた運動会。
息子は選手入場から様々な出し物も、お友達に手を引かれてサポートしてもらいながら頑張っています。
年長さんがやる開会の言葉なども、言葉が言えない息子も名前を呼ばれ壇上にあがり、代わりにお隣の子が話してくれたり、本当にクラスの1員として、すべてに参加させてもらいました。
そしてクライマックスのリレーが始まりました。
年長さんは園では最後の運動会なのでリレーにはかなり力が入っています。
しかし息子は競争することの意味がわからないので、本気で走ることはしません。
私はどうなることかとハラハラして見ていると、やはり走りながらも途中で座り込んでしまったり、キョロキョロよそ見をしています。
次の子にバトンを渡すころにはもう他のチームはゴールしてしまうような有様でした。
それでも次の男の子は辛抱強く息子の名前を呼びながら待ち、やっとバトンを渡されると、泣きながらひとりでゴールまで走りました。
息子のチームの年長さんは号泣しています。
私は泣いている子ども達にもカメラと抱えている親御さんたちにも「悪かったな~」と思い、競技が終わってから謝りにいきました。
「ごめんね。○○(息子)がゆっくりだから負けちゃって。最後の運動会だったのに本当にごめんね。」
と言うと、まだ涙の痕が残る顔をあげてニッコリ笑い
「だいじょうぶ。仲間だから!」
と言ってくれたのです。
私はジーンとして、胸が熱くなりました。
今までにこんなに素直で温かい言葉を聞いたことがありません。
そしてその子のパパも、その場に居合わせて「うんうん」と笑顔でうなずいていました。
その子は閉会式でも息子の手をしっかりと握り、息子になにやら笑顔で話しかけながら退場門をくぐり、そんな2人には盛大な拍手が贈られました。
保育園を卒園した今でも、すぐ近所に住むその男の子は会うと必ず声をかけてくれます。
「○○くん、おはよう」
「○○くん、いってらっしゃい」と。
息子からの返事がなくても、変わらず声をかけ続けてくれることに感謝です。
その言葉はきっと息子の心に響いているばすです。